近年、薄毛に悩む人は、増加傾向にあります。薄毛の原因は男女でも異なり、様々ありますが、自分の薄毛に対する明確な対処法が判断しづらく、周りにも相談しづらいため対策できないままいるという方も多いかもしれません。しかしその悩みを幹細胞が解消してくれる可能性があります。
髪の毛が成長しない理由は?
幹細胞と発毛がどんな関係にあるかを説明する前に、まずはなぜ薄毛になるのか主な原因から考えてみましょう。
髪にはヘアサイクルがある
1つの毛根から生えた髪の毛は、約2〜6年の期間をかけて成長期→退行期→休止期→脱毛の過程を辿って、新しい髪に生え変わります。それがヘアサイクルです。休止期を迎えた髪の毛は毎日出るため、日々発生する多少の抜け毛(50~100本程度)は自然なことです。しかし成長しきれない早い段階で髪の毛が抜けると次の髪の毛はしばらく生えてこないことになり、成長途中で抜けてしまう髪の毛の数が増えると薄毛になってしまいます。
ヘアサイクルが乱れる原因は何か?
では、なぜ成長途中の髪の毛が抜けてしまうのでしょうか。
血液循環が悪い、遺伝的に男性ホルモンに影響される感受性を持っている、皮膚に炎症がある、頭皮が緊張状態にある、加齢、ストレス、生活習慣の乱れ、間違った頭皮ケアをしているなどのほか、加えて女性の場合、分娩後の脱毛、女性ホルモンの影響など複数の要因があります。そういった細かい原因もどれも薄毛に繋がります。
しかし、それ以上に根本的で最大な原因があるのです。それは毛包の元にある毛包幹細胞の働きが悪くなることにあります。つまり頭皮に存在する幹細胞さえ、しっかり働いていれば多少頭皮環境が悪くても、髪の毛はしっかり生えてくれるということになります。
幹細胞と発毛の関係について
髪の毛にとって重要な働きをする幹細胞ですが、そもそも幹細胞はどんな働きがあるのでしょうか?
私たち人間の体は膨大な数の細胞で維持されています。その細胞は体の機能を維持するために細胞分裂を繰り返していますが、中には寿命が短いものや、ケガや病気で失われてしまう細胞もあります。失われた細胞の代わりを再び生み出し、補充する能力を持つ細胞が「幹細胞」なのです。
幹細胞には自分と同じ細胞を生み出す自己複製能と、筋肉や軟骨、骨、脂肪、神経など違うものに分化する分化能という2つの能力があります。その能力を活かして長年の研究の末、再生医療の現場ではすでに幹細胞を使ってケガや病気で失われた組織を再生する再生治療も行われ始めています。また再生美容の世界でも幹細胞を使った細胞レベルでの若返り施術も行われています。
幹細胞は全身の様々な場所に存在していますが、頭皮にも毛包幹細胞と色素幹細胞が存在しています。毛包幹細胞が発毛を促し、色素幹細胞が髪の毛に色をつける、とそれぞれに役割があり、頭皮の幹細胞が健やかな髪の毛の成長の鍵を握っていると言えます。頭皮に存在する幹細胞の働きが悪いと、成長中の髪の毛が抜けたり、黒くならないまま生えたりということが起こってしまうのです。
毛包幹細胞を活性化させるには?
幹細胞にはしっかり働いてもらう必要があります。ではどうすれば幹細胞は活性化するのでしょうか?
細胞には、レセプターと呼ばれる鍵穴のようなものがあります。その鍵穴に一致するリガンドと結びつくと活性化が始まります。そのリガンドとなるのが成長因子です。成長因子を毛包幹細胞に届けることができれば、毛包幹細胞は活性化することになります。成長因子は本来誰でも体内に持っていますが、常に一定量存在しているわけではありません。再生医療では、ステムサップという成長因子を始め発毛に有効な成分を補う薄毛治療を行なっています。
ステムサップを使った治療の方法
ステムサップは、幹細胞を培養したときに出る脂肪由来幹細胞の培養上清です。腹部などの脂肪組織中に含まれる幹細胞の培養液を採取・精製したものを、麻酔を塗った頭皮に注射、その後効果を高めるために点滴でも体内に届けます。幹細胞培養液には成長因子を始め、様々な発毛にとって有効な成分が含まれています。その成分を体内と頭皮に直接取り込むことで、毛包幹細胞を刺激し、発毛を促します。
市販されている幹細胞培養液の効果
幹細胞が持つ力には、医療の現場だけでなく、化粧品やサロンなどでも注目が集まっており、育毛剤も例外ではありません。市販されている育毛剤にも幹細胞培養液を使用した美容液が既にいくつも販売されています。
しかし、ステムサップのように幹細胞培養液を体内に直接取り込むのとただ塗布するという違い以上に、幹細胞培養液の濃度が全く異なることは意識しておくべきことです。市販されている化粧品・医薬部外品に関しては、含める成分の割合は決められています。そのため濃度に大きな差が出るのです。
また幹細胞培養液の製法に関しても、クリニックで幹細胞を培養するときは、厚生労働省の認可を得た、施設で厳しい品質管理のもと作られていて、感染症検査等、各種の検査をクリアしたものしか使用されていません。安全面においてもクリニックでは万全な体制をとっていることも重要視したいことの一つです。