動物であれ植物であれ、命あるものは細胞から成り立っています。「細胞を培養する」とは、一言で言うと、細胞を生物から取り出し、生体外で生かし続けることです。細胞を培養するには、その細胞を取り出す前の環境に近づけるのが最良と考えられています。
古くは19世紀から、世界中の研究者の多大な努力によって、動物・植物・菌・バクテリアなど様々な種の生物の、多様な細胞の培養法が確立されてきました。
動物細胞の培養は、培養中の細胞に様々な処置を加え、生物「個体」レベルでは見ることが難しい細胞への影響を細かく見ることができるため、疾患研究・創薬研究にとても有用です。
また、一部の動物細胞はウイルス研究のためにも用いられています。ウイルスは自身のみでは増殖することができませんが、宿主となる細胞に感染させ、制御された条件下で増殖させることができるため、抗ウイルス薬の創製やワクチンの開発に有用です。(もちろん、実験者はウイルスの取扱いに最新の注意を払わなければいけません)
細胞を培養するためには、まずはそれぞれの培養に適した温度・湿度・気体組成を整えることが重要となります。どこの研究施設でも、細胞はインキュベーター(培養器)と呼ばれる機械の中で培養されます。インキュベーターとは、空気調整機能付きの保温器です。
ヒトやマウスなどの哺乳類の細胞の培養では、一般的にインキュベーターの温度を37℃に設定し、中に水受け皿を入れて湿度を約95%に保ちます。
また、インキュベーターとボンベをホースでつなぎ、空気組成を調整します。
一般的には5~20% O2、5~10% CO2に設定しますが、これは培養する細胞株によって異なります。例えばヒトiPS細胞の場合、20% O2・3~5% CO2で培養する方法が一般的です。